オープンソースソフトウエア(OSS)に関する連載の4回目。今回はOSSの国内産業での導入事例を紹介する。デジタル家電や携帯電話の組み込みソフト分野、医療向けのシステムなど生活で接する分野での導入も増えている。目に見ることはできないが、裏側をOSSが支えているのだ。
■情報家電の基本ソフトで採用が進むリナックス
まずは、携帯電話とデジタル家電というもっとも身近な例から取り上げよう。
携帯電話ではNECとパナソニックモバイルコミュニケーションズが携帯電話用の基本ソフト(OS)にリナックスを採用している。携帯電話向けに特化したリナックスである「Mobilinux Open Framework」を搭載して製品化している。(リナックス搭載製品は、MobilinuxのWebサイトで確認できる、 http://www.jp.mobilinux.com/about/phones.html )。
デジタル家電では人気の薄型テレビの多くにもリナックスが採用されているという。特に、松下電器産業は、デジタル家電向けソフトの統合プラットフォーム「UniPhier(ユニフィエ)」の標準OSとしてリナックスを採用しており、このプラットフォームを採用しているほとんどのデジタル家電でリナックスが稼働しているということになる。
家庭用ゲーム機では、ソニーが「プレイステーション3(PS3)」にリナックスを導入するための文書を積極的に公開している。この文書に基づいて開発されたPS3用リナックスも登場している。ソニーは、PS3の持つ高い処理能力を活用してもらうため、こうしたオープン路線を採用している。
このように情報家電のOSには、リナックスが幅広く採用されている。この動きが目立ち始めたのはここ数年だが、そのための活動は2003年頃から始まっている。特に、家電向けOSのコンソーシアムである「CELinuxフォーラム」( http://www.celinuxforum.org/ )では、ソニーと松下が積極的に活動を続けている。
■インターネットでは当たり前
インターネットで利用できるサービスでは、OSSがかなり普及している。例えば、中小規模のウェブサイトで数多く採用されているのは「LAMP」と呼ばれる組み合わせだ。OSにリナックス(Linux)、ウェブページを表示するためのソフトに「Apache」、データベース管理ソフトに「MySQL」、ウェブサイトでプログラムを実行するための言語に「Perl」(もしくは「PHP」か「Python」)を使うもので、頭文字を取ってLAMPと呼ばれる。具体例では、野村不動産アーバンネットが運営する不動産情報サイト「ノムコム( http://www.nomu.com/ )」は、このLAMPで構成されたウェブサイトとなっている。
ちなみに、前述したApacheは世界の半数以上のウェブサイトで稼働しており、トップシェアだ。イギリスのネット調査企業であるNetCraftは、2007年6月のApacheのシェアを53.76%と発表した( http://news.netcraft.com/archives/web_server_survey.html )。
■日本医師会主導で進むOSS採用
これまで紹介してきた業種とだいぶ毛色が変わるのだが、実は国内の医療ビジネスの現場でも、オープンソースは着実にその足場を固めつつある。
医療現場の事務処理で欠かせないものに、診療報酬明細書(レセプト)がある。これは、医療機関が「公的医療保険の運営者」つまり医療保険の請求先に、どのような診療を行い、薬を処方したかを報告する書類である。この診療報酬明細を元に、医療費が算出されて保険料が支給される。
日本医師会は診療報酬明細作成ソフト(レセコンと呼ばれる)を開発し、これを日医標準レセコンとしてオープンソースで公開している( http://www.jma-receipt.jp/index.html )。6月時点で4000以上の医療機関で導入されているという。
オープンソースであるためライセンス費用はかからない。特定の企業に縛られることなく、多くの企業が導入や運営のサポートをすることが可能になっている。なお、この日医標準レセコンは、リナックス上で動作する。
日本医師会は医療の世界の元締め的存在であり、医療現場で欠かせないレセコンを共有資産となるオープンソースとして開発・公開していることは、医療事務の電子化・効率化を進めるうえで極めて意義のある活動と言えるだろう。
一部導入も含めてOSSの導入が進んでいるのは、公共関連のシステムだ。それに比べると大規模システムではまだ、それほど普及していない。ただし、三菱東京UFJ銀行がシステム構築に「Seasar2」というオープンソースの開発フレームワークを採用するなど、取り組みは着実に増えている。
前回も指摘したが、OSSには誤解される部分も多い。更なる普及のためには著作権の問題など正しい知識を持ってもらうように、努力していかなくてはならない。
[2007年7月2日]
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