オープンソースソフト(OSS)というのが何のことかよくわからないけど、Google(グーグル)やYahoo!(ヤフー)は毎日使っているという人は多いと思う。実はこれらのウェブサイトのシステムではOSSを“ふんだん”に利用している。それだけでなくウェブ以外の、ソフトウエアをあまり意識しないような携帯電話や家電にもOSSが使われだしている。つまり、われわれは知らず知らずのうちにOSSを利用していて、それらがなければサービスを受けたり製品を使ったりすることがままならないようになっている。OSSとは何なのか、入門講座を今回から短期連載する。
■20年前には原型が登場
最近メディアでも頻繁に見かけるようになったOSS。言葉はよく聞くけれど、「オープンソースとはいったいどういう存在なの?」というのが世のビジネスパーソンの実情だろう。まだまだ誰もが知っているものではなく、インターネット業界をはじめとする情報システム関係者や経営者層のごく一部に少しずつ浸透しはじめているレベルだ。
毎年、IT業界では新しい言葉が生まれては消えていく。それだけ技術革新が速いとも言えるのだが、そんな業界においてオープンソースという言葉は比較的古く、1998年頃から使われはじめている。それまではフリーソフトと言われた。しかも遡ること、今から20年前にはオープンソースの原型となるモデルが存在している。
オープンソースとは文字通り、プログラムを構成するソースコードが公開されているもののことを指す。プログラムは通常、ソースコードをもとにコンピューター上で実行できる形式に変換して配布されている。
プログラムのソースコードを公開することはすなわち、誰でもその内容を見て改変したりそれを参考にして別のプログラムを作成したりできることになる。商用のソフトウエアとして販売しているマイクロソフトなどの製品がオープンソースとなれば誰もが同じものを作れてしまい有償製品としての付加価値を失うので、ソースコードを公開していない。
■リナックス以外にも有望ソフトが登場
オープンソースの代表例は基本ソフト(OS)の「リナックス」だ。ちょっと前まではオープンソースとリナックスが同じ意味のように使われていた。「OS」だったり、「OSS」だったりと似たような言葉がたくさんあって混乱しそうなところだが、最近では更に「オープンスタンダード」というような言葉も一般化してきており、言葉の違いを理解するだけでも大変だ。
さらにシステムを開発するうえでの基盤になるソフトウエアであるミドルウエアの分野では、インターネットサイトを運用するためのサーバーソフト「Apache」、データベースソフトの「MySQL」や「PostgreSQL」、プログラム言語では「PHP」「Perl」「Python」「Ruby」などがある。
それらのアルファベット頭文字をとってLAMP(LinuxのL、ApacheのA、MySQLのM、PHPもしくはPerlもしくはPythonのP)やLAPP(MySQLのMの代わりにPostgreSQLのP)とも呼ばれる。昨年はプログラム言語の「JAVA」をオープンソース化すると米サン・マイクロシステムズが発表して話題となった。
■グーグルが活用
ビジネスでのOSS利用の成功例という意味で代表格はグーグルになる。検索エンジンやメール、ネット広告配信などウェブサイトでさまざまなサービスを提供しているが、それらのサービスに使うシステムはOSSを使って構築しているという。
グーグルの場合、多くのOSS技術者を抱えて自らソフトウエアの運用・サポートをすることで、商用のソフトを使う場合と比べてライセンス費用のコスト削減とソフトウエア更新などの運用コストの削減を実現している。
ただし、OSSはすでに全世界で15万点も存在するといわれている。グーグルといえども全てを1企業で網羅して自前で運用するのは限界に近づきつつある。グーグルではいち早くOSSコミュニティーといわれる世界の開発技術者のネットワークを利用し、そのコミュニティーの成果を自社のサービスの開発に取り入れている。
■毎年2万点ペースで増加
OSSは毎年2万点ペースで増加している。このままのペースなら、世の中にある全てのジャンルのソフトウエアを網羅することは時間の問題だろう。そうした流れを背景に、これらのOSS資産をいかにして活用するのかということに焦点が移りつつある。有償のソフトウエアを販売している会社がたくさんあるが、近いうちに同業他社との競争ではなくOSSとの競争になっていくものと思われる。
その身近な例を挙げると、パソコン用の文書作成や表計算、プレゼンテーション作成ができる「オープンオフィス(OpenOffice.org)」がある。この分野では、マイクロソフトの「オフィス」が圧倒的なシェアを持ってはいるが、オープンオフィスはマイクロソフト製品に近い豊富な機能を揃え、マイクロソフトのオフィスで作成したファイルも利用できるデータ互換性もある。更に米アドビ社の文書ファイル形式「PDF」に変換するソフトも標準装備されている。
こうしたさまざまな機能を持つにもかかわらず無料で入手でき、自由に使用できるため、OSSは官公庁、学校などを中心に導入が進んでいる。マイクロソフトはこの無償のオープンオフィスとの競争を強いられているのだ。
■オープンスタンダードの流れも
ちなみにこのオープンオフィスは「Open Documentフォーマット(ODF)」という国際標準のファイル形式(国際標準規格ISO26300)を採用しているため、今後はパソコンでの利用に限らず、インターネットサイトのシステムに組み込むなど、新たな用途開拓が期待されている。こうしたデータ形式の国際標準化の流れ、統一規格化をオープンスタンダードと言う。
OSS普及に伴って、様々なOSSを組み合わせて利用できるようになった。これからはオープンスタンダードに基づくOSSなのかどうかがシステム採用の決め手になっていくだろう。この流れは有償アプリケーションでも起こっており、同時にOSS普及の要素にもなっている。
オープンソースはようやく普及期を迎えた。ダウンサイジングの流れに乗り、価格破壊を起こしIT業界の常識を覆しながら着実に全世界同時進行形で浸透し続けている。その一方でオープンソースに携わる人たちの間でもオープンソースの正しいあり方について、未だに議論が続いている。この行く先はどうなるのか、次回以降で解説していく。
[2007年6月4日]
Googleを支える「OSS」って何?・オープンソース超入門(1)
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